tabi blog

私たちが旅に出たのは
ちょうど 20世紀最後の夏でした.
世界の建築や街並みを 実際にこの目で観てみたいと
ヨーロッパを巡り アジアを横断して 1年4ヶ月.
2001年 晩秋
旅から戻った私たちに 深く刻み込まれていたこと
それは
「世界はあまりに多様である」ということでした.

ひとつ空の下
様々な気候風土の中 様々な人々が
様々な文化を育みながら 暮らしている.
ただ一つの価値観や 一つの法則で語れないことが
この世界を 豊かで美しく 奥深いものにしているのだと.
長旅は これまでの私たちの若く頑なな価値観を
解きほぐしてくれるものでした.

同時に あらためて確信したことがありました.
“本物”の持つ 素晴らしさです.
建築であれ 街並であれ その空間であれ
人の信じる心であれ その生き様であれ
素晴らしいものは やはり本当に素晴らしい.
そしてそれは 場所も時代も越え
一つところではなく
一つの価値観によるものでもなく
多様な世界のなかに 存在しているのでした.

言葉にしてしまえば 当たり前のことのようですが
本物の素晴らしさを 本質的なものの素晴らしさを
私たちは旅をしてゆく中で 実感したのです.
それは メディアを通してではなく
実際に触れなければ 身を持って体感しなければ
真の意味では 分からないことでした.
そして その素晴らしきものとの出会いは
我々の心を揺さぶり
生きていることの歓びを 与えてくれたのです.

私たちは今 井の頭公園の緑を見渡す仕事場で
また建築と向き合っています.
旅で刻み込んだものを芯に据え
人との出会いのなかで
それぞれの 多様な生き方と向き合っています.

真に豊かな環境に生きる歓びを
共に 生きて分かち合いたいと
心から 願いながら.

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今回 新たなHPでは
これまでとは 少し違うアプローチをとっています.
建主さんと主軸にしてきた もっとも大切なこと
その主軸の部分を より上手くお伝えしたい為に

トップページの写真は
住まいとしての器と そこでの暮らしが相まって
ゆっくりと移り変わってゆきます.

仕事リストのページでは
日常の暮らしの風景も交え
その家 その家族を想うなかで
自然に浮かびくる言葉を添えました.

住まい という小さな環境は
自然の感覚に委ね 大切なことを芯に据えている限り
まだまだ豊かに拡がる可能性があることを
拾い読みとっていただけるなら
それは私たちにとって 何よりの歓びです.



佐藤哲也 + 布施木綿子