tabi blog

空間のちから

建築の設計では
2次元に置き換えられた間取りや
床や壁の素材が何であるか
断熱や設備がどれだけのスペックかということに
気が奪われがちです.
 
確かに
間取りは 使い勝手の善し悪しを左右し
素材は モノの持つ力強さや味わいを見せてくれ
断熱や設備は 現代生活の快適さを増してくれ
光の入りや風通しは 健やかな暮らしを約束してくれます.
その組合せに調和を図ることは とても大切です.
 
けれども その上で
もっとも重要で 人に大きく影響を与えると
私たちが専心するのは
モノの形を成しているものではなく
その間にある虚なる部分
つまり物質によって創り出される空なる部分
「空間」です.
 
老子はこう述べます.
30本のスポークがハブに集中している、
しかし車輪の本質をなしているのは それらの間の空間である.
壷は粘土でできている、
しかし壷の本質をなしているのは 中の空間である.
窓と扉をそなえた壁が家を構成している、
しかし家の本質をなしているのは 壁に囲まれた空間である.
− the road to Basel(Helmut Schmid)より −
 
空間には 大いなる可能性があると感じます.
大きい建築であろうと 小さな住まいであろうと
空間を感じながら 丁寧につくり込み
愛情を持って 使い込む(住み込む)ことで
そこに息吹が吹き込まれ
真に 生きた空間となる.
そしてそれこそが 私たちが建築の設計に
ことさら住空間の設計に
取り憑かれる魅力といえるでしょう.

空間は
住まう人にとって
臆するものでなく 気取るものでもなく
本来の自然な姿に 還れるものがいい
人生において
歓びに輝く時も 哀しみに暮れる時も
嵐の日も おだやかな日も
共に在ることが 自然であるような
生きていることが 歓びとなるような
そのような空間を
私たちは求めていきたい

空間のちからを信じて